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施政方針
(令和5年2月22日)
令和5年3月嘉麻市議会定例会
私が、市民の皆様からの負託を受け3期目の市政を担わせていただくことになり、早一年が過ぎようとしておりますが、この一年は、国際的にも市政運営におきましても、先行きの見通しができない激動の一年であったと感じております。
まず、初めに、新型コロナウィルス感染症につきましては、国内で初めて感染が確認されてから丸3年が経過する中、国の方針では、現在の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に変更するとの考えが示されました。一方でいまだ終息の兆しが見えない状況は続いており、今後も国、県、近隣自治体の動向に注視しながら、速やかな情報提供を行い、アフターコロナを見据えた新しい取組にも挑戦しつつ、引き続き、市民の皆様が安心して生活できるよう感染拡大防止に向けて最善の努力をし、必要な施策を適宜適切に講じてまいります。
また、ロシアによるウクライナ侵攻などに伴う、エネルギーや肥料の価格高騰は、長引くコロナ禍による経済活動の停滞と相俟って、市民生活や企業活動を直撃するなど、非常に深刻であると受け止めております。
一方で、人口減少問題はいよいよ厳しさを増し、平成18年合併時に47,036人いた人口は本年1月末現在35,464人となり、あわせて嘉麻市の少子高齢化もますます深刻なものとなっています。
このように困難な状況は山積し、まさに変革の時代の訪れを感じていますが、辛抱強く、粘り強く、挑戦を恐れずに、市民の皆様に身近な市政運営においては誠心誠意、全力で取り組んでまいります。
さて、令和5年度の市政運営では、引き続き、私の公約であります
・安定した雇用の創出
・住みたいまちづくりの推進
・結婚、出産、子育て支援
・高齢者が元気で住み続けたいまちづくり
・人口減少に対応した持続可能なまちづくり
を課題とし、施策を講じるとともに、第2次総合計画及び第2期総合戦略を基調に、嘉麻市に住みたい、住み続けたいと思える、持続可能な魅力あるまちづくりを目指し、市民の皆様や議員各位のご意見を賜りながら、市政の運営に邁進する所存でございます。
昨年策定した第2次総合計画後期基本計画においては、各施策分野に、持続可能な開発目標SDGsの17の目標を関連付けました。「誰一人取り残さない」人権尊重の理念を基礎に、経済、社会、環境等のあらゆる分野においてSDGsにつながっていることを意識しながら、市民の皆様への周知啓発を含め、積極的に取組を進めてまいります。
それでは、第2次総合計画の基本方針に基づき、具体的な課題や取組を申し述べさせていただきます。
初めに、基本方針1「豊かな暮らしを支える活力あるまちづくり」に関する取組について申し上げます。
農業振興におきましては、農村環境が持つ、国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成等、多面的機能を維持・発揮すべく、国、県と連携した多面的機能支払交付金及び中山間地域等直接支払交付金への取組継続・拡大を推進します。
また、地域ごとに農業者や農地所有者等との話し合いの場を設け、地域が抱える課題の把握、解決に向け、令和5年度に法定化される人・農地プランに代わる地域計画の作成に取り組んでまいります。 水田収益力強化ビジョンにおいては、国による情報提供等をふまえ、高収益作物の導入や転換作物の付加価値の向上等の検討及び支援を実施し、産地強化を図るとともに、担い手不足の解消策として、就農を希望する若者に向けた窓口開設を進めてまいります。
林業振興におきましては、森林環境譲与税を活用した森林経営管理制度の取組として、引き続き森林所有者の経営管理に関する意向調査を行うとともに、管理の委託等を希望する森林については森林調査を実施し、林業経営の効率化及び森林管理の適正化の一体的な促進を図り、林業の継続的発展及び森林の有する多面的機能の発揮を推進します。
商工業振興におきましては、物価の高騰などの影響により、地域の経済活動が大変厳しさを増しているなか、市内事業者への影響を最小限に抑えるため、継続して独自の市内事業者支援策を検討するとともに、現在、策定作業を行っている第2次中小企業振興基本計画においては、市内事業者の実態に即したより具体的な取組を盛込む予定としており、今後も市内商工団体との連携をより一層強化し、引き続き市内事業者の支援に取り組みます。
企業誘致におきましては、雇用の場拡充に向け、新たな企業誘致の実現と既存企業の規模拡大を促進するための施策を展開します。
喫緊の課題である用地の確保につきましては、民地登録制度の活用にあわせ、本年度に実施しました工業団地可能性調査の結果を踏まえ、山野候補地で実現性が高いプランを選定し事業化決定に向け、最終判断を行うための本格的な調査を行い工業団地整備に向け具体的に検討してまいります。
また、雇用促進につきましては、厚生労働省の地域雇用活性化推進事業を活用して立ち上げました「嘉麻市地域雇用活性化協議会」を実施主体として、企業及び求職者に対するセミナーや就職相談会などを開催し、市内企業の人材不足解消と市内での就業機会の確保及び促進を図ってまいります。
こうした取組により、今後も多様な就業の場の創出を目指し、市への企業誘致を実現します。
観光振興におきましては、アウトドアシティ宣言と、第3次観光振興基本計画に基づき、豊かな時間の過ごし方や暮らしを表すデンマークの言葉であるHygge(ヒュッゲ)をコンセプトとした観光まちづくりに引き続き取り組み、アウトドアシティ嘉麻の実現を目指します。
移住・定住促進におきましては、引き続き、地域おこし協力隊を積極的に活用し、第3期の隊員募集を行います。
また、移住支援金制度、市独自支援策の住まい応援交付金等も含め、移住に向けたPRを強化し、一人でも多くの 移住・定住に繋げてまいります。
次に、基本方針2「誰もが健やかに暮らせる福祉のまちづくり」に関する取組について申し上げます。
生涯にわたるいきいきした健康社会の実現におきましては、第2次保健計画後期計画に基づき、市の実態に即した健康増進のための取組を推進してまいります。市民の健康づくりへの意識の向上及び主体的な健康づくりを支援するための事業を充実させるとともに、関係各課及び関係機関と連携し、自殺対策を生きるための包括的支援として実施するため、第2次自殺対策計画を策定いたします。
高齢者福祉の推進におきましては、本市の高齢化率が年々上昇し、介護保険サービスの需要が高まる中、高齢者福祉計画及び第8期介護保険事業計画に基づき、高齢者が要介護状態になっても住み慣れた地域で安心して生活が営めるよう、介護保険サービスの充実をはじめ、健康づくりの推進、介護予防の充実、また、認知症対策への取組等、地域包括ケアシステムの構築に向けて体制の拡充を図ってまいります。
また、次期高齢者福祉計画及び第9期介護保険事業計画では、第8期計画の検証を行い、高齢者福祉施策の内容や介護保険料の設定などについて検討してまいります。
とりわけ、介護保険料につきましては、引き続き、関係機関との連携を取りながら、ケアプランチェック等により介護給付の適正化を図るとともに、介護保険制度の安定的な運営を推進し、現行の介護保険料を堅持できるよう進めてまいります。
子育て支援の充実におきましては、第二期子ども・子育て支援事業計画を踏まえ、各種事業を計画的に推進するとともに、SNSやホームページ、子育てガイドブック等により積極的に情報発信し、「子どもを産み育てやすい嘉麻市」を目指します。
待機児童につきましては、減少傾向にはあるものの、目標のゼロには至っていないため、国や県の補助事業を活用し、公立・私立一体となって、引き続き課題解決に取り組んでまいります。
また、市独自の取組として、保育料の軽減、障がい児保育支援事業、将来を担う子どもの誕生を祝う「すくすくかまっこ祝金」の支給や、高校生までの医療費全額無料などを継続して実施します。
妊娠、出産、子育てに対する切れ目のない支援としましては、国が進める伴走型相談支援の実施や産後ケア事業の充実、乳幼児健診や発達支援の連携等、子育てに関する継続的な支援体制の充実を図るとともに、国・県の補助金を活用した「出産・子育て応援交付金」を支給するなど、子育て世帯の経済的負担の軽減を図りながら、出産・子育てに対する支援を積極的に行ってまいります。
また、児童虐待につきまして、引き続き、母子保健との情報共有の充実と関係課や児童相談所等、関係機関との連携を強化し、児童虐待への未然防止と対応を図るとともに、教育相談や学習等支援室など、教育に関する相談体制を充実することで、母子保健、子育て及び教育の相談等に対する支援事業の一体的な実施に向け、子育て総合支援センターにおける切れ目のない、総合的かつ継続的な支援を実施いたします。
ノーマライゼーションの理念に基づく障がい者福祉の充実におきましては、第6期障害福祉計画・第2期障害児福祉計画に基づき、共生社会の実現、また、障がい者及び障がい児一人ひとりの特性やライフステージに応じた総合的かつ継続的な支援の充実を図ります。
また、令和5年度に策定予定である第7期障害福祉計画・第3期障害児福祉計画では、国の制度改正や県の施策動向及び環境の変化を踏まえ、引き続き、障がいのある人や障がいのある子どもを支援するサービスの充実を図ります。
次に、基本方針3「ふるさとに誇りを持てる教育・文化のまちづくり」に関する取組について申し上げます。
「第5次教育アクションプラン」に基づき、市の発展に貢献できる人材を育成するため、就労できる学力や心の育成など7つの主要施策を進めています。
少人数指導推進事業では、引き続き、市内全小中学校において、30人以下の学級編制等を行い、児童生徒一人ひとりの状況を把握しながら、個別最適な学びを実現することによって学力の向上を図ってまいります。
学力向上強化プロジェクト事業では、毎週土曜日の「土曜未来塾」を引き続き実施し、児童生徒の基礎的な学力の定着を図ります。
小中一貫教育推進事業では、稲築西、稲築東、碓井の3つの義務教育学校が、本年4月にいよいよ開校いたします。施設分離型の嘉穂、山田中学校区も含めて、中学校区を基礎とする小中一貫教育を行うことにより、「ふるさと嘉麻を胸に志を持ち社会にはばたく子どもたち」を育成します。
生涯学習の推進におきましては、これまでの基本的な取組を柱としながら、市民の多様な生涯学習ニーズに応えるため、性別や慣習・経歴に捉われない選択的な市民の活動、活躍の場を提供することが求められています。これらの活動、活躍の場により、一人ひとりの学びを通した生きがいの創出につなげていくことが重要です。そのため市民が自己を磨き、豊かな人生を送るために、いつでも、どこでも学習することができ、その成果を適切に次世代に活かすことができる生涯学習の環境整備を市民と共に構築し推進してまいります。
プロジェクトK事業におきましては、コオーディネーショントレーニングについて、市内の保育園・幼稚園・小学校・中学校にて着実に普及し、その事業展開は、現在、ふれあい・いきいきサロンや公民館等、草の根的に拡がりを見せています。
今後も草の根的事業展開で、人材育成はもとより、人と人を繋ぎ、さらには地域と地域を繋ぎ、地域の活性化を図ってまいります。
次に、基本方針4「自然と共生する安全・安心なまちづくり」に関する取組について申し上げます。
防災・減災対策におきましては、引き続き、コロナ禍における災害時の避難所対応等を適切に実施するとともに、更新した防災マップの周知を図り、「自分の身は、自分で守る。」という意識の醸成を図ります。
一般国道322号嘉麻バイパスの整備におきましては、バイパス整備により、移動時間の短縮が図られ、地域間交流や物流活動の更なる活性化に繋がることが期待されます。
現在、大隈・山田間をつなぐ「山田トンネル」をはじめとした「嘉麻バイパス」区間の整備は着実に進展しており、令和5年度は、県において、2本目の「大隈トンネル」の整備工事の着工が予定されております。全線開通は、本市の活性化に大きく寄与するものと確信しておりますので、今後も本区間の早期整備に向け、国、県への要望活動を継続するとともに、事業が円滑に進むよう関係機関との連携を図ってまいります。
公共交通体系整備事業におきましては、運行形態の変更から4年目を迎えるところでございますが、路線定期運行、デマンド運行ともに着実に利用者数を伸ばし、市民の移動手段として定着しているところです。
本年度に策定している公共交通施策の新たなマスタープランとなる地域公共交通計画に基づき、市バスの利用状況等を踏まえた運行計画の改善はもとより、老朽化している車両の更新や待合環境の整備等を行いながら、運行の効率化と利便性向上、利用促進を図り、官民が共存し、将来にわたって公共交通を維持確保できるよう取り組んでまいります。
環境にやさしいまちづくりにおきましては、自然環境の保全に向け、第2次環境基本計画に定めた施策を推進するとともに、環境・経済・社会に関する課題の総合的解決を目標に、持続可能な嘉麻市の実現に向けSDGsの達成を目指します。
また、水資源の保全を目的に、引き続き、合併処理浄化槽設置を推進しております。汲み取り便槽からの転換について補助金の拡充を行うことで、更なる促進を図ってまいります。
次に、基本方針5「市民と行政による協働のまちづくり」に関する取組について申し上げます。
人権教育・人権啓発の推進におきましては、様々な人権課題解決の取組は行政の責務であるとの認識の下、差別のない人権が尊重されるまちづくりの推進に関する条例及び人権教育・啓発基本方針に基づき、人権問題の解決に向けた取組を継続的に進めております。
しかし、インターネット上では、意図的な差別情報の書き込みや、特定地域をさらす目的での動画掲載などに加え、身元調査を前提とした戸籍や住民票の写しの不正取得など、人権を脅かす事案は、益々、深刻化しています。
さらには、学校や地域、家庭、職場での偏見や差別、いじめや虐待、新型コロナウイルス感染症に関する人権侵害事案等、後を絶ちませんが、一方でこれら多くの事案がマスメディアに取り上げられることによって、社会における人権意識や人権への関心は高まっています。全ての人権課題の解決には、人権施策の普及はもとより、市民の協力を得ることが重要です。市民一人ひとりが不確かな情報に惑わされることなく、様々な人権問題について正しく理解し、誰もが直面しうる問題として、認識を深めていただくとともに、市では関係機関と連携し、部落問題をはじめとするあらゆる人権問題の解決と人権が尊重される「誰一人取り残さない」社会の実現に向け、今後も「差別のない人権が尊重されるまちづくり」を目指してまいります。
男女共同参画の推進におきましては、第3次男女共同参画社会基本計画及び第2次配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する基本計画に基づき、目標達成に向け総合的かつ計画的に取組を行っているところです。
社会の各分野において、依然として性別による役割分担意識が根強く残っているなど、未だジェンダー平等に対する意識が十分でない現状において、市では、継続して課題解決に向けた取組を行うことが重要だと考えております。
今後も、男女共同参画社会=ジェンダー平等社会の実現に向け、計画的な施策の展開を図ってまいります。
市民参画の推進につきましては、まちづくりにおける市民参画や地域コミュニティの果たす役割は、ますます重要なものとなっております。
また、SDGsという「持続可能な取組」への概念は必要不可欠となりました。
特に、平成20年度から取組を進めている「市民提案型事業」においては、市民との協働の推進に向け、一人でも多くの幅広い年代の方々が参加する仕組みとなるよう検討を重ねるとともに、活動団体の輪がさらに広がるよう細やかな支援を行い、市民が主体となった活力ある地域づくりの推進を図ります。
小さな拠点形成促進事業の推進につきましては、地域づくりの一環として継続して実施し、これまでに4地域において地域将来計画策定の取組支援を行ってまいりました。4地域の運営組織が持続可能な地域へ発展していくために、令和5年度も、計画等の策定、審議会の開催などをとおして、地域
の実情に応じた拠点づくりができるよう引き続き支援を行っ
てまいります。
旧庁舎跡地の利活用につきましては、本庁、各支所のある地域が有機的に連携し、発展することを目指し、地域整備基本計画に基づき、地域の特性を活かした利活用を図ります。
定住自立圏構想におきましては、定住自立圏形成協定と嘉飯圏域定住自立圏共生ビジョンに基づき、引き続き、嘉麻市、飯塚市、桂川町の2市1町がお互いの自主性を尊重しながら、定住に向けた機能充実や地域の魅力向上の推進をはじめ、圏域の住民が安心して暮らし続けられるよう取組を進めてまいります。
昆虫産業都市構想推進事業につきましては、大手企業が昆虫食産業へ参入を表明するなど、成長分野であることを裏付ける状況となっております。
市としましては、九州大学昆虫科学・新産業創生研究センターとの連携協定に基づき、市の遊休施設等を活用することにより、昆虫に関する研究や実証実験などの環境を提供するとともに、引き続き九州大学、経済関係団体や市内外の民間事業者などと協議を重ね、昆虫産業基本構想策定後には、速やかに産学官民連携による事業推進体制の構築を進めてまいります。
行政のデジタル化の推進につきましては、デジタル庁が設置されるなど、全国的にデジタル化への取組が進められています。市においても、デジタル化への対応として、デジタル戦略課を設置し、デジタル化の更なる推進、住民の利便性向上、業務効率化、行政サービスの向上等につながる実効性のあるデジタル推進計画を令和5年度に策定し、行政のデジタル化・オンライン化などを積極的に推進してまいります。
また、デジタル社会のパスポートであるマイナンバーカードは、国においても積極的に普及促進されております。
そして、このカードによって、本人確認が必要な、あらゆる公的・民間サービスなど、色々な場面での利活用が考えられており、今まで以上にマイナンバーカードの普及が求められます。
今後につきましても、市民の皆様が安心して、カードの申請や利用ができるよう、引き続きサポートの充実を図っていくとともに、コンビニでの各種証明書の交付をはじめ、マイナンバーカードを持っている方の利便性向上のための環境づくりを推進してまいります。
行財政改革におきましては、現在、第4次行政改革に取り組んでおりますが、依然として厳しい財政運営を強いられていることに変わりはなく、自立した自治体として持続的に発展するため、人口規模に見合った効率的な行政運営を行ってまいります。
以上、私の基本的な考え方を申し述べました。
冒頭にも述べましたが、先行きの見通しができない変革の時代が訪れようとしています。何事も、一朝一夕にはいきませんが、このような時こそ、辛抱強く、粘り強く、挑戦を恐れずに、あらゆる可能性を探り解決策を見出していかねばなりません。
私に課せられた使命を改めて肝に銘じ、誠心誠意、全力を尽くして取り組む所存でございますので、市民の皆様、そして議員各位のご理解・ご協力を切にお願い申し上げまして、令和5年度の施政方針とさせていただきます。
令和5年3月
嘉麻市長 赤間 幸弘