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背中には白い幣竿、胸には太鼓。しゃぐま(毛頭)をかぶり、藍と白を交互に染めた手っ甲に、ヘラの皮の腰みのをつけ、藍地に梅模様のたすき、脚はん、白たび、わらじ姿で舞う12人の楽方たち。
所作を決めるたびに、背中にかついだ幣がさらさらと揺れます。楽打ちをする楽方も、カネを打つ鉦方も、みんな地元の少年たちです。
昔は、未婚の青年男子が楽方を担っていましたが、いまでは、山野地区の氏子の少年たちから選ばれるようになりました。いつもは、幼い表情をのぞかせる少年たちも、この日は別人のよう。1月5日メートルはある重い竿を背中に、太鼓を打ち鳴らしながら一心に舞い続けます。
この「山野の楽」は、毎年9月の秋分の日に、山野・若八幡神社の宮馬場で行われます。約750年前から続く祭事で、寛元2年(1244)に宇佐八幡宮の御分霊を、この地に祀ったさい、楽もいっしょに伝わったといわれています。
祭りの当日、楽方は白門にある茶屋ノ元橋のところで、お潮井採りを行います。帰りには柳の枝を折り、川の水を浸して、馬場の向かい側にある水神棚にお参りをします。
お昼ごろ、装束を整えた楽の一隊は、若八幡神社横の伝承館を出発し、笛やカネではやしながら、町内を練り歩き、宮馬場に入ります。一年に一度、往古をしのばせる舞楽は、それから静かに始まります。
山野の楽
楽方12人、鉦方2人、笛方2~4人、太鼓方2人で行う楽。氏子の安全や五穀豊作を祈ります。
若八幡神社
天喜元年(1053)に創建されたと伝えられています。
右上/水神棚
右下/水神棚には、鯛1尾に御供え3つ、塩、酒などを供え、神事を行います。
左/町内を練り歩く楽の一隊
奏楽図(若八幡神社蔵)
明治時代の楽のようすが描かれています。明治23年の「楽祭規約書」もあり、それによると一時中断していた楽が、村内の相次ぐ火災で復活したと記されています。